どんな映画でも、ラストシーンは作品を構成する上で重要な役割を担う。本作では特にその意味は大きく、主人公の男女2人の演技に物語のすべてが集約される。エンドロールが流れるで味わう余韻(よいん)はたぶん、感動というよりも淡いやるせなさ、切なさだろう。
舞台は雪に包まれた北海道の小さな町。父親(北見敏之)と暮らす黒田冬沙子(高岡早紀)は、単調ながらもそれなりに満足できる日々を送っている。ある日、閉鎖された遊園地の近くで言葉を話せない男、門倉渉(渡部篤郎(わたべ・あつろう))と出会い、心を動かされる。そんなとき、冬沙子は仕事先の牧場で起こした落馬事故で頭を打ち、ごく最近の記憶を失ってしまう…。
原案を手がけ、主役も演じた自主制作の初監督作品を、渡部は「リアルな日常の記録」と説明する。前半は手持ちカメラによる不安定な映像が多用され、物語が進むにつれて落ちついていくのは、平凡な日々に物足りなさも感じている冬沙子が、渉と出会うことで輝いていく様子を投影しているかのようだ。渡部はもちろんセリフが一切ない。目と表情、身ぶりで表現するその姿が、全編を貫く透明感と静けさの中に溶け込む。
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